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制作メモ

デザインで工夫したところ、用紙・加工などの制作にまつわるお話です。

清水良洋

僕はなぜ小屋で暮らすようになったか

書名:僕はなぜ小屋で暮らすようになったか
副題:生と死と哲学を巡って
著者:高村友也
版元:同文舘出版
発行:15年12月8日 第一刷
判型:四六判 縦組 並製


装画:鶴田陽子さん
装幀:清水


刷り・用紙:
◎カバー帯
 刷り:オフセット4色
 用紙:アラベール キク判 Y目 76.5Kg ナチュラル
 加工:グロスニス
◎表紙
 刷り:特色(DIC330)1色
 用紙:GAクラフトボード-FS L判 T目 23.5Kg クレイ
◎本扉
 刷り・用紙:本文共紙共刷り


見本頂戴日:15年11月30日


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本書は著者が、雑木林に小屋を建て、河川敷にテントを張って暮らす
「現在の生活に辿り着くまで」を語った自伝的な内容。


本書は〈お金を掛けずに楽しくシンプルライフ〉という類いのものではなく、
〈この生きづらい時代〉思考の世界と現実的な生活との
折り合いをつけてゆく〈試行錯誤の記録〉なのです。


本書のエピローグに「今の生活を始めたときは、
生きることだけで精一杯になってしまう社会から逃れ~」と言う一節がある。
この一節で「自分に向けられた本だ」と感じる方が居たら
是非、本書を読んで頂きたい。
読後は、自分の中から穏やかに〈希望〉が立上がって来るのを感じると思います。


僕に依頼を頂いた時点で、装画は版元から鶴田陽子さんに依頼済みだった。
鶴田さんのラフ画を元にアレコレと装幀案を作成。
装幀案を検討し、鶴田さんには「コレコレこの様に仕上げて下さい」と
フィードバック。


鶴田さんは意欲的に取り組んで頂き
版画の刷り違いを幾つか仕上げてくださった。

その中を幾つかを印刷所でスキャニングして貰い
僕の方で良い部分を合成し、全体を調整した。


書名がカバーの下部にあり、帯を掛けるとカバーの書名が隠れます。
なので、帯にも書名が入ってます。


帯の書名は50級、カバーの書名は30級です。
書店やweb上での書影は帯付きで書名が大きく、帯を外すと書名は控えめ。
この仕掛けは僕なりの本書への解釈を表わしたものです。


書名の書体に〈はんなり明朝〉を選んだのは
既存のフォントベンダーの書体にはないハンドメイド感や不揃い感が
本書に通底して感じる〈儚さ〉を表わせると思ったからです。


見返しの用紙をヤメました。
「この本には見返しはいらない」と思い提案し同意を得ました。


書店やwebで本書と出会った時
〈静かな森の中の小屋と出会った〉
そんな印象を持って貰えたらと装幀しました。


本書は今回初めて依頼を頂いた版元の仕事。
初めての依頼で、とてもやりがいのある内容に
僕もついついチカラが入り、担当編集のTさんのアレコレと提案。
Tさんはそのアレコレに実に丁寧に対応して下さりました。


追、著者ブログでは、本書上梓後も続く著者の〈試行錯誤〉が綴られてます。

清水良洋

浅田真央 Book for Charity

書名:浅田真央 Book for Charity
著者:吉田順
版元:Gakken
発行:11年6月23日 第一刷
判型:四六判 縦組 上製


本文デザイン:佐野
装幀:清水


刷り・用紙:
◎カバー
 刷り:オフセット4色
 用紙:コート紙(何でも可お任せします。白色度の高いものを希望)
 加工:グロスPP
◎表紙
 刷り:特色(DIC80)1色
 用紙:コート紙(何でも可お任せします。白色度の高いものを希望)
 加工:グロスPP
◎見返し
 用紙:色上質 厚口 サーモン
◎はなぎれ
 22C(伊藤信男商店)


見本頂戴日:11年8月5日

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浅田真央 さらなる高みへ』への奥付けを見ると
初版第一刷の発行は11年2月25日。


浅田選手のファンには「高み本」として愛されているそうで
アマゾンには多くのレビューが投稿されています。


その「高み本」が、まだ新刊として書店店頭に平積みされている頃
3・11東日本大震災が発生しました。


本書の巻頭にはカラー4頁が入り、次の本扉をめくると


「浅田真央 Book for Charity」の収益(利益)は、
日本赤十字社を通じ、東日本大震災の被災地に向け、
復興支援のための義援金として送られます。


浅田真央 吉田順 学研教育出版 


と記されています。


そして次の見開きには
「チャリティーブック刊行にあたって」と
浅田選手の手書きメッセージが入ってます。


届いた見本の見返しには
「マルプデザインさんへ」とサインとともに
直筆で添えてありました。


浅田真央 Book for Charity』にサイトで詳しく記載されていますが
本書は多くの賛同者と協力者によって制作されました。
そしてその中に僕らも加われた事をとても光栄に思ってます。


一職業人として震災後まもない時期に、
少しでも自分の職で役に立てる機会に恵まれた事を感謝し、
被害に遭われた方々、
今も不自由な暮らしを余儀なくなれている方々へ、
心よりお見舞いとお悔やみを申し上げます。

清水良洋

ドクター小鷹、どうして南相馬に行ったんですか?

書名:ドクター小鷹、どうして南相馬に行ったんですか?
著者:香山リカ 小鷹晶明
版元:七つ森書館
発行:15年4月17日 第一刷
判型:四六判 縦組 並製


本文デザイン:佐野
装幀:清水


刷り・用紙:
◎カバー帯
 刷り:オフセット4色
 用紙:OKミューズガリバー グロス CoC 四六判 Y目 110Kg ハイホワイト
 加工:グロスPP
◎表紙
 刷り:特色(DIC163)1色
 用紙:クラフトリブロライナー 四六判 Y目 240.5Kg
◎本扉
 刷り・用紙:本文共紙共刷り
◎見返し
 用紙:モフル 四六判 Y目 90Kg シトロン


見本頂戴日:15年4月21日

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東日本大震災発生後、
香山さんは「支援者支援」の一環で南相馬市に赴く。


「支援者支援」とは「支援者、つまり大震災や原発事故で
救済活動や復興活動にあたっている
さまざまな職種の方たちへの心のケア」だそうです。


その支援者支援の現場で香山さんと小鷹さんが出会います。


香山さんは「この小鷹医師という人、
ずいぶん地元の状況と震災や原発事故、
そして自分自身を客観的に見てるなあ」と感心し、


香山さんは自身のブログマガジンのなかで
「往復書簡をしませんか」と小鷹さんに打診する。


こうして始まった往復書簡を書籍化したのが本書です。


19年間勤務したの大学病院を辞めて南相馬に移った小鷹さん。
本書を読み進めるとその小鷹さんの心境が
「ここに来た理由」から「ここに居る理由」へと
変化しているのを感じます。

香山さんと小鷹さんののほほんなやりとりが感じられる
刊行トークイベントの動画がアップされています。


「震災から4年が経過したなかで、
被災地での言説は、すでの飽きられています。
誰が何を説明しようが、これは紛れもない事実です。」
「たまにで結構ですので、被災地について思いを馳せていただければ、
私もなんとかこの地でがんばれます。」と小鷹さんは言われます。


震災関連では色々な書籍が刊行されていますが
本書は小鷹さんの書簡を通して、まるで被災地の
日常や問題を追体験している様でもあります。
是非、被災地について思いを馳せ読まれてみては如何でしょう。


もともと往復書簡なので読み易いのですが
担当編集のKさんの丁寧な編集でより読み進められます。


因にカバーの似顔絵は本文デザインで
往復書簡の双方を示すアイコンとして佐野が作ったものを
Kさんが「著者が気に行っているので装幀にも使いましょう」と
提案頂きました。

清水良洋

三陸つなみ いま むかし

書名:三陸つなみ いま むかし
副題:元NHK記者 半生記の取材メモから
著者:山川健
補筆:竹内日出男
版元:イー・ピックス
発行:14年5月31日 第一刷
判型:四六判 縦組 並製


本文デザイン:佐野
装幀:清水


刷り・用紙:
◎カバー帯
 刷り:オフセット4色
 用紙:コート紙(何でも可、おかませします。白色度の高いもの希望)
 加工:マットPP
◎表紙
 刷り:特色(DIC523)1色
 用紙:NTラシャ 四六判 Y目 170Kg スノーホワイト
◎別丁扉
 刷り:特色(DIC523)1色
 用紙:用紙=やよいカラーR 四六判 Y目 100Kg 白
◎見返し
 用紙:用紙=やよいカラーR 四六判 Y目 100Kg 白
◎本文(4色頁も共紙)
 用紙:メヌエットホワイト 四六判Y目68kg 


見本頂戴日:14年6月5日


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人の縁とは時として不思議なものですね。

本書の著者、山川さんは元NHK記者。
山川さんが記者になったばかりの1960年5月にチリ地震が発生。
全国で139人、大船渡でも53人の方が亡くなった。
この津波取材から山川さんの記者生活が始まった。


以来記者生活51年。引退を意識していた矢先に東日本大震災が発生。


今回間近に目撃した被災現場、そして救助復興の課題
震災後改めて注目された「貞観の大津波」など過去の津波の歴史など
山川さんが三陸沿岸生きる人々のエピソードを織り交ぜ
その場所の息づかいが聞こえてくる様に描写しています。


今年は震災から5年、映像アーカイブなどもまとめられ配信されていますが
この三陸を半世紀に渡り取材した山川さんの視点が書かれている本書は
他にない貴重な、そして胸を打つ1冊です。


イー・ピックスは大船渡にある印刷と出版の会社です。
本書の進行にあたってはイー・ピックスのKさんと
上京の際に何度か打合せし「写真がいくつかあるので、
本文にバっと見開きで写真を入れたらどうでしょう」と
提案したりと土地と土地の距離はありますが
Kさんの情熱もあって丁寧に進められました。



人の縁とは時として不思議なものですね。


本書の奥付けには「本書は、2013年に左右社から出版された電子ブック版
『三陸つなみいまむかし』を、左右社の許可を得て写真など一部に手を加え、
イー・ピックスからペーパー版で出版したものです」と記してあります。


上記にある様、イー・ピックスがペーパー版を作るのにあたって
僕も会友である〈版元ドットコム〉のメーリングリストに
「装丁をしてくれるデザイナーを探しています」と
イー・ピックスのKさんが流しました。


そのメールに早速会員社の方が


「日本図書設計家協会さんのHPに、
所属されている方の作品が掲載されています。
それぞれの方の特徴がわかると思いますので、お好み・本にあうと思われる
デザイナーの方を探して見られてはいかがでしょうか。」や


他にも「私どもはデザイン、DTPも行なっています。
もし必要であればご連絡ください。」
などの返信があった。


僕は普段こうしたメールに返信はしないのですが
Kさん「NHKの大船渡支局に50年間奉職していた報道記者の随筆です」
の一文に惹かれて「弊社は書籍デザインを営んでます」と返信したら


追掛けでスタイルノートの池田さん
「いろいろとデザイナーさんを紹介していただいて、
弊社もマルプデザインさんにもお願いしています。
いろいろと、本作りについてや、デザインの方針なども
きちんと話してくださるので、安心しておまかせしてます。
ご参考になれば幸いです。」返信があった。


ちょっと照れるが有り難い。
池田さんの援護もあってか、Kさんから本書のご依頼を頂いた。


丁度今もイー・ピックスのKさんから新規のご依頼を頂いている。
内容から考え、本件の方向性などのディレクションは僕がキチっとやり
デザインワークは若いスタッフに担当させている。


版元ドットコムや出版協など
青弓社クオンなど良いご縁に恵まれている。
有り難いことです。

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