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制作メモ

デザインで工夫したところ、用紙・加工などの制作にまつわるお話です。

清水良洋

オール・イン

書名:オール・イン
副題:実録・奨励会三段リーグ
著者:天野貴元
版元:宝島社
発行:14年3月26日 第一刷
判型:四六判 縦組 並製


写真:ゲッティーイメージズ
装幀:清水


刷り・用紙:
◎カバー
 刷り:オフセット4色
 用紙:コート紙(何でも可お任せします。白色度の高いものを希望)
 加工:グロスPP
◎帯
 刷り:特色(DIC331)1色+スミ1色=2色
 用紙:コート紙(何でも可お任せします。白色度の高いものを希望)
 加工:グロスPP
◎表紙
 刷り:スミ1色
 用紙:タント 四六判 Y目 180Kg N-4 
◎見返し
 用紙:タント 四六判 Y目 100Kg R-3 
◎別丁扉
 刷り:特色(DIC524)1色
 用紙:タント 四六判 Y目 100Kg R-5 


見本頂戴日:14年3月8日

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棋士・天野貴元さんの自伝です。


天野さんはプロ棋士ではありません。
天才少年と将来を嘱望されながら
その才能からの自尊心やあせりからか
将棋には真摯に対峙しつつも
中学生の頃から酒、競馬、麻雀、キャバクラ、一日6箱のタバコ。
プロ入り目前ながら年齢制限でアト1歩届かず。


その後は将棋普及に尽力しながら
プロ雀士を目指す。
そして「舌がん」の宣告、舌を切除ーー。


「28歳で中卒、資格なし言語障害という、将棋で言うなら
「序盤で王手飛車」級のビハインドを背負ってしまった僕だが、
会心の逆転劇を連発していたあの黄金の日々の記憶を支えに、
これからも攻めの姿勢で行きていきたいと思う。」
と、天野さんはあとがきで記してます。


本書、重い内容ではありますが
これが読み易く、ひと言ひと言が響いてきます。
そして読後感は清々しさに溢れるものです。


本書の担当編集Kさんとは何冊もご依頼頂いてますが
このような内容の本であっても清々しい読後感に仕上がり
編集の妙味に毎回感嘆してます。


本書もKさんが企画し天野さんに打診したそうです。
『オール・イン』はカジノ用語。
「手持ちの賭け金を全てゲームに投じること」
人生の全てを将棋に賭けた天野さんを表わす書名です。


本文を読んだ印象と、ブログでの天野さんの言葉や姿から
装幀は〈天野貴元の本〉にしたく、
探した画像を色調補正し、書体を加工し
〈他の将棋本ではなかなかやらないだろう〉アンダーな世界観を作りました。
帯には奨励会時代の対局中の天野さんの写真を入れました。
面白い内容に自分でも気に入った装幀が出来ました。


見本出来し喜びの天野さん
書店を偵察する天野さん
そして「第26回 将棋ペンクラブ大賞 文芸部門大賞」を受賞。
天野さんとお目に掛かりませんでしたが
すっかり天野さんの魅力に惹かれ僕はブログをよく拝見してました。


15年10月28日にKさんからメール。
「今日の未明に『オール・イン』の天野君が亡くなりました。 」
天野さんの最近の病状や本書について気持ちも綴られました。
そして「彼はペンクラブ大賞を受賞したときにも、
「本をデザインしてくれた人にお礼をしたい」 ということを言っていて、
「いつでもセットするから」と言いつつ、
機会を逸してしまったことが 悔やまれます。 」


お目には掛かれませんでしたが
友人を亡くしたようなおもいです。
ご冥福をお祈りします。


棋譜には全く同じものがないそうです。
他には無い天野さんの人生、
是非『オール・イン』を読んでみて下さい。

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